近年、公立保育園の運営を支える自治体において、紙おむつのサブスクリプションサービスの導入が注目されています。このサービスは、保育園に直接紙おむつを届けることで、保護者や園の負担を軽減します。一部公費負担をしている福井県南越前町や全額保護者負担の東京都新宿区、広島県東広島市など、多くの自治体が導入を公表し、保護者からの要望も増えています。
しかし、提供業者が多く、サービス内容や導入実績も似通っているため、どのサービスを選べば良いのか判断が難しいかもしれません。そこで、公立保育園へのおむつサブスク導入を検討する際に重要な点を、本記事では詳しく解説します。おむつの品質、料金、加入率、園の負担軽減、選定方法など、自治体に最適なサービスを選ぶための参考情報を提供します。
保育士の業務負担は軽減される?
おむつサブスクリプションの導入による保育士の業務負担軽減に関しては、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
まず、保護者の視点から見ると、おむつサブスクを利用することで、持ち物の数が減り、おむつに名前を書く作業が不要になるため、保護者の負担は確実に軽減されます。ただし、費用が保護者の負担となる場合、サブスクに加入しない選択肢もあるため、一概に全員が加入するわけではない点を考慮する必要があります。
保育士の観点では、加入している園児としていない園児が混在することによる管理の複雑化が考えられます。おむつサブスクに加入している園児が多ければ、一人ひとりのおむつを管理する必要が減少し、業務の効率化が見込めます。しかし、加入している園児とそうでない園児がいると、誰がどのおむつを使用するかを把握し続ける必要があり、この点が管理を複雑にする可能性があります。
結論としては、サブスクの加入率が高ければ高いほど、保育士の負担は軽減される可能性が高まります。加入率がクラス内で半分以上になると、保育士にとっての利点がより明確になるでしょう。ただし、完全な一元管理には至らない可能性もあるため、業務の実際の流れや加入状況を見ながら判断することが重要です。
保育負担の少ないサービスを選ぶポイント
現在、数多くの業者によって提供されているおむつサブスクサービスは、一見すると似ているように思えますが、実はそれぞれに細かな違いがあります。これらのサービスは、おむつの種類だけでなく、提供される付加価値やサービス内容においても、独自の特色を持っています。
(その1)おむつの補充方法
おむつサブスクサービスの導入において、保育士が特に負担に感じる可能性のある部分は、おむつの補充と発注のプロセスです。このプロセスを簡潔にすることが、保育士にとって重要な要素となります。サブスクサービスには大きく分けて、「在庫報告タイプ」と「必要時発注タイプ」の二つの発注方法があります。
発注方法
- 在庫報告タイプ:この方法では、在庫の数量を定期的にカウントして報告する必要があります。この手間はありますが、在庫が尽きるリスクは少なくなります。
- 必要時発注タイプ:必要な時だけを依頼するので非常にシンプルです。発注に慣れてくると毎回在庫数量を入力するのは面倒と感じるようであれば、こちらが良いかもしれません。指定日配送が可能な場合、例えば月初に1ヶ月分をまとめて発注することで、負担を軽減できるかもしれません。
さらに、発注方法にはオンラインシステムのほかに、FAX、メール、電話のみを使用するオプションもあります。保育園にとって最適な方法を選択することが、保育士の業務負担を軽減する鍵となるでしょう。
(その2)おしりふき
おしりふきについて、一般的な認識として「どれも同じ」と思われがちですが、保育の現場では違いが大きな影響を及ぼします。特に、保育士にとっては、日々の使用において、その違いが業務の負担に直結するため、選択は非常に重要です。また、肌にやさしい素材のおしりふきを選ぶことで、園児のおしりかぶれのリスクを低減できるため、保育士の心配事も減少します。
このため、おむつサブスクを選ぶ際には、おしりふきの品質にも注意を払うことをお勧めします。サンプルを手に取り、実際に使ってみることで、その品質を確認することが重要です。保育士の負担を軽減し、同時に園児の快適さと安全を確保するためには、これらの要素を慎重に検討することが求められます。
(その3)解約・変更手続き
おむつサブスクサービスの特徴の一つとして、園児がおむつを卒業する際に必ず解約手続きが必要となる点が挙げられます。この解約プロセスが煩雑であると、保育士にとっての追加的な負担となる可能性があります。例えば、解約方法の確認や、解約期限を逃した場合の対応などがこれに該当します。
そのため、保育園としておむつサブスクサービスを選ぶ際には、解約手続きの簡便性を重要な選択基準として考慮することが望ましいです。特に、保護者がオンラインで簡単に解約申請ができるようなサービスは、保育士の負担を大幅に軽減することができます。
解約手続きの簡便性を提供するサービスを選択することにより、保育士は解約に関連する余計な業務から解放され、本来の保育活動により集中することが可能になります。また、保護者にとっても手間が少なく、スムーズな運用が可能になるため、全体的な満足度の向上にも寄与するでしょう。
(その4)カスタマーサポート
保育士の業務負担を考慮する上で、おむつサブスクサービスに関する保護者からの質問や問い合わせが直接業者に行えるような体制の整備は非常に重要です。保育士がサービスに関する問い合わせの対応を行う必要がなくなるため、保育に専念できる環境が確保されます。
このため、保護者が簡単にアクセスできる連絡手段を提供されていることが望ましいです。例えば、ウェブサイトに設置される問い合わせフォームだけでなく、チラシやその他の印刷物に電話番号、メールアドレス、またはQRコードを掲載することで、保護者が業者に直接連絡を取りやすくなります。
これにより、保護者は自身の疑問や問題を迅速に解決でき、保育士は保護者からのサービスに関する質問に対処する負担から解放されます。結果として、保育士の業務効率が向上し、園児へのケアに更に集中することができるようになるでしょう。
(その5)お支払い方法
おむつサブスクの導入にあたり、最も信頼性の高い支払い方法として、口座振替とクレジットカードが挙げられます。この2つの方法は、すでに多くの自治体サービスでも採用されており、その実績と信頼性から、利用者に安心感を与えるものです。また、公立保育所という公共性の高い施設で提供されるサービスだからこそ、保護者の方々に公平かつ確実な方法で支払いを行っていただく必要があります。例えば、住民税や国民健康保険料、水道料金の支払い方法として、多くの自治体で口座振替サービスが利用されています。これは、一度登録をすれば毎月自動的に引き落とされるため、保護者が支払いを忘れることなく、手続きが簡素化されます。これと同様に、保育所のおむつサブスクでも、口座振替を導入することで、未払いによる強制解約のリスクを軽減することができます。これは園を挟んだ保護者とのトラブル防止につながるとも考えられます。
クレジットカードは自治体サービスにおいても、固定資産税や住民サービスの支払いで広く利用されています。保護者にとってはポイントが貯まることや、簡単なオンライン手続きができることから、利便性が高く、特に若い世代の保護者に支持されています。ただし、クレジットカードを持っていない方も一定数いらっしゃるため、クレジットカードのみの決済にする場合は注意が必要です。
口座振替だけでなく、クレジットカードまたは電子マネーやQRコード決済といった新しい支払い方法も使えると様々なニーズを取り込むことができるようになりますね。
公立の保育園へ導入する上で決めたい4つのスキーム
公立保育園におむつサブスクを導入する際、考慮すべき重要な4つの要素があります:支払い方法、おむつの種類、予算設定、そして選定方法です。これらの要素にはさまざまな選択肢があり、それぞれの自治体のニーズに合わせた適切な選択が求められます。
(その1)利用料金の集金方法
おむつサブスクの支払い方法には、主に二つの形態があります。保護者が直接契約するケースと、保育園や自治体が契約を行うケースです。これらの契約形態はサービス提供業者によって異なるため、選択の際にはどちらの契約形態に対応しているかを確認することが重要です。
パターン1. 保護者と業者で契約
おむつサブスクの導入方法の一つとして、保護者がサービス提供業者と直接契約を結ぶパターンがあります。この方法では、保護者がサービス料金を業者に直接支払います。支払いオプションは業者によって異なり、クレジットカード、口座振替、コンビニ支払いなどがありますが、手数料が110円程度発生するケースもあります。また、サービスの解約は保護者が業者に直接申請し、保育園はシステム上または毎月送られてくるリストを通じて契約者を確認します。
パターン2. 保育園・自治体と業者で契約
おむつサブスクサービスのもう一つの導入パターンは、保育園や自治体がサービス提供業者と契約を結ぶ方法です。この場合、保育園または自治体がサービスの費用をまとめて支払います。支払い方法としては、銀行振込が一般的ですが、支払いのタイミングや条件など、具体的な契約内容を確認することが重要です。
(その2)採用するサービスを全園で統一するか
おむつサブスクサービスの採用に関しては、自治体によってアプローチが異なります。一部の自治体では全ての保育園で統一されたサービスを利用することを選択している一方で、他の自治体では各保育園が独自に異なるサービスを選ぶ場合もあります。
パターン1. 全保育園でサービスを統一する場合
おむつサブスクサービスの導入において、自治体が全保育園でサービスを統一するパターンは、複数の利点をもたらします。異なる保育園でバラバラのおむつを使用すると、自治体全体での把握が難しく混乱を招く可能性があります。そのため、コスト、品質、業務の負担軽減などの観点から、最も適切と思われる業者1社にサービスを統一することは合理的です。さらに、職員の異動があった場合でも、異動先の保育園で同じシステムを利用できるメリットがあります。ただし、小規模な保育園が存在する場合は、配送ロットの問題や、園によって異なる所得層を考慮する必要があります。統一サービスを選ぶ際には、品質を維持しつつコスト面も細かく検討する必要があるでしょう。
パターン2. 保育園ごとに異なるサービスを採用する場合
公立保育園でおむつサブスクサービスを採用する際に、保育園ごとに異なるサービスを選択するアプローチもあります。地域の特性や所得層の違いにより、各保育園には異なるニーズが存在するため、それぞれに最適なサービスを選ぶことが望ましいと考えられます。自治体がある程度のフィルタリングを行った上で、各保育園にサービスの選択を任せる方法や、保護者の多数決によってサービスを決定する方法は、このような状況において効果的です。
(その3)保護者全額負担 or 自治体負担
おむつサブスクを導入する際の一般的なパターンは、コストを保護者が全額負担する形式です。この方法は、通常のおむつ購入と同等、またはわずかに高いコストで実現可能であり、保護者にとっても一定のメリットがあります。そのため、自治体は子育て支援としてこのサービスの導入を推進することができます。また、自治体は予算不要でサービスを導入できるため、スピーディーな導入が可能です。
しかし、保護者負担の場合、加入率を高めることが重要です。全員がサービスを利用するわけではなく、利用者と非利用者が混在する可能性があるためです。保育施設としては、加入者が多い方が運営が容易になるため、トライアルの実施や家庭用サンプル特典などを提供する協力的な業者を選ぶことが望ましいです。
パターン2. 一部もしくは全額を自治体で負担する場合
おむつサブスクの導入において、自治体が費用の一部または全額を負担するパターンもあります。この方法では、保護者の経済的負担が軽減されるため、全員がサービスに加入することが容易になります。また、自治体による子育て支援の一環としてメディアに強くアピールすることも可能です。しかし、保育園を利用していない家庭が不公平と感じる可能性があるため、一部負担を検討するか、または保育園以外の施設(例えば児童館など)にもサポートを拡大することが望ましいでしょう。このような取り組みにより、より広範な子育て支援を実現することが可能です。
(その4)選定方法
最終的に保護者か保育園に選定してもらう方法と自治体の方で決めてしまう2パターンがあります。
パターン1.保護者による選定
自治体が定める一定の条件を満たす業者の中から、保護者の多数決でサービスを選ぶ方法があります。このアプローチは、費用を負担する保護者自身がサービスを選定するため、透明性が高く支持を得やすいというメリットがあります。この方法は、園ごとに異なるサービスを採用するケースや、全園統一のサービスを選定する場合にも適用されます。
ただし、多数決を行う際には、保護者の意見だけでなく、保育園の業務適合性も考慮することが重要です。例えば、ITスキルに不慣れな保育士が多い場合にオンライン発注のみをサポートする業者を選ぶと、業務負担が増加する可能性があります。そのため、多数決を実施する前に、保育園の実情に合致したサービス選定が行われるべきです。
パターン2.自治体による選定
おむつサブスクサービスの選定において、自治体による総合的な判断に基づくパターン2も一般的です。このケースでは、たとえ保護者が負担する場合であっても、自治体がサービス提供業者を選定します。最もコスト効率の高い選択肢を選ぶのが一般的な考え方ですが、それだけでなく、地元の業者を優先する、地元の紙おむつメーカーを利用する、おむつ廃棄処理を含むサービスを選ぶなど、さまざまな要素が判断基準となります。
自治体による選定は、適切に行われた場合、保護者と保育士の両方の負担を軽減するメリットをもたらします。保護者の意見をヒアリングやアンケートを通じて集め、保育士の負担を考慮しながら、バランスの取れた最適なサービスを選択することが可能です。
あくまでも一つの例ですが、保護者にアンケートを取る際の質問の内容をご紹介します。
質問1. | 解説 |
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おむつサブスクを利用したいか? | おむつサブスクを導入することが既に決定している場合は利用したいかどうかではなく、検討可能か?と言い換えることも可能です。ここで利用したい人の数が少ないと加入率が低くなる可能性がありますので慎重に進める必要があります。 |
質問2. | 解説 |
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利用を検討する場合は何を重要視するか?(費用、ブランド、登録解約手続き、など) | この質問については、多少の差はあれど、地域に関わらず費用重視が7~8割を占めます。保護者のおむつに対するコスト意識の高さが非常に高いことが理由と思われます。 費用についてもう少し突っ込んだ質問をするのであれば、「最低限の品質を満たす安さ」重視なのか、それとも「品質と費用のバランス」重視なのか聞いても良いかもしれません。ブランドについては、「ブランドは問わないが高品質なおむつであること」「普段使っているおむつであること」と更に細分化してもよいかと。 |
質問3. | 解説 |
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普段どのブランドを使っているか? | この質問はアンケート母数が多いほどおむつのマーケットシェアそのままの結果となります。多少順位の前後あるかもしれませんが、ネットで一度国内シェアを検索してみてください。「普段使っているおむつであること」を重視するというアンケート結果であればその自治体で最も使われているブランドを採用することも検討可能と存じます。 |
質問4. | 解説 |
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月額いくらであれば利用するか?(〜2,000円、〜2,100円、〜2,200円、〜2,300円、〜2,500円、〜3,000円、〜3,500円) | 費用感は加入率に大きく影響しますので、非常に重要な要素になります。当然安いほど良いですが、おむつならなんでもよいという訳にはいかないのがおむつサブスクです。中にはあのブランドは嫌という保護者もいらっしゃいますので、コストと品質のバランスが重要となります。 |
質問5. | 解説 |
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登録、解約や支払い方法で重視する点(オンライン完結、支払い方法が多様である、解約が容易、サポート体制) | 保育現場でICT化が進んでいるのと同様に保護者もネットで手続きするのを好まれる方が増えております。 |
質問6. | 解説 |
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検討しない理由はなんですか?(持参が負担でない、持参と比べて割高なイメージ、おむつを卒業している、品質が心配) | 持参が負担でないと考える方が思ったよりもいらっしゃいます。こういった方は試行導入などで体感いただくことで、おむつサブスクの利便性をご実感いただける可能性があります。 |
選定時に最低限は考えたい項目
業者を選定する際にある一定の基準を満たした業者を候補とする必要があります。例えば現行おむつを小袋に入れて廃棄しており、その小袋も供給してくれることが条件だったりと、それらは自治体によって重要視する項目が違いますので、参考までにいくつかご紹介させていただきます。
(その1)プライバシーマーク保有の有無
おむつサブスクサービスでは、お子さんの名前や支払い情報など、多くの個人情報を取り扱います。保護者契約の場合、自治体が直接契約を行わないため、これらの情報は自治体の管理範囲外になります。しかし、自治体は保護者に適切なサービスを紹介する責任があり、この責任を果たすために、サービス提供業者がプライバシーマーク(通称:Pマーク)を保有しているかどうかをサービス選定の条件として設定することがあります。
個人情報の適切な管理が重視される現代において、自治体としてどのように業者を選定し保護者に紹介しているのかを明確にすることは重要です。事業者だけでなく、保護者が利用するクレジットカード決済や口座振替などの決済業者がPマークを保有しているかどうかも重要な考慮事項となります。このような安全策を講じることで、保護者にとっても安心してサービスを利用できる環境を整えることができます。
(その2)導入までのスケジュール
保護者契約と園・自治体契約ではスケジュールが変わってきます。保護者登録が必要の場合は保護者に登録してもらう期間が必要ですのでその分スケジュールがタイトになります。
- N月:調査(ヒアリングやアンケート)
- N+1月:トライアル事業者決定+トライアルの申し込み
- N+2月:トライアル開始
- N+3月:アンケート+事業者決定+保護者登録+トライアル終了
- N+4月:利用開始
※保護者登録は業者によってタイミングが変わってきますので確認が必要です。トライアルの提供期間は業者によって変わってきますので確認が必要です。
(その3)実証実験(試行導入)
おむつサブスクサービスの導入を成功させるためには、無料トライアルへの参加率が極めて重要です。トライアルは保育施設での運用確認はもちろんのこと、保護者の加入率にも大きく影響します。無料であるとはいえ、全員が参加するわけではないという点を理解しておく必要があります。無料期間が終わり、有料化に移行すると、特に利用枚数の少ない2歳児クラスなどでは継続利用しない保護者も出てくることがあります。また、おむつには個人差があり、統一されたおむつが全ての家庭に合うとは限りません。初期の参加率が低い場合、有料化した際にさらに利用率が下がる傾向が見られます。そのため、加入率を上げるためには、できるだけ多くの保護者に無料トライアルに参加してもらうことが鍵となります。
また、新入園児は慣らし保育の関係で登園日数が少なく、一見するとおむつサブスクを割高に感じてしまう方もいらっしゃる可能性があります。そのため、入園月は紙おむつの持参を選択された保護者が、その後も持参を継続されるということが考えられます。そのため、毎年新たに入園する新入園児にも無料のトライアルを提供することで加入率の向上が期待できます。
本格契約前の試行導入(実証実験)時には事業者には個人情報を収集させない
おむつサブスクの本格契約に先立ち行われる試行導入(実証実験)では、保護者の個人情報の取り扱いに特に注意が必要です。サービスへの参加を検討している保護者にとって、トライアル期間中に子どもの名前や住所、電話番号、クレジットカード情報などの個人情報を提供することは、心理的な障壁となる可能性があります。また、自治体がサービスを紹介する立場を取る場合、特に責任ある紹介者として、実証実験に伴う個人情報の漏洩リスクを最小限に抑える必要があります。
そのため、実証実験の間、事業者に対して保護者の個人情報を一切提供しないという対策が望ましいと考えられます。このアプローチは、保護者のプライバシーを守りつつ、サービスの評価を行う上での障害を減らす効果があります。しかし、個人情報を提供する必要がある場合は、事業者の個人情報保護体制が適切に構築されていることを確認することが重要です。このようにして、保護者の信頼を保ちながら、サービスの適切な評価を行うことができます。
保護者への丁寧な説明
自治体内の異なる保育園では、おむつサブスクの加入率に大きな違いが見られることがあります。地域差も一因ですが、保護者への園からの説明の仕方によって、サービスへの印象や加入意欲が大きく変わることがあるためです。単にチラシを配布するだけではなく、時間を割いてサービスの詳細やメリットを説明することで、加入率を高める効果が期待できます。忙しい中でも、保護者にサービスへの理解を深めてもらうためには、できる限り丁寧な説明が必要です。また、サービスの検証として、トライアルへの参加を積極的に促すことも重要です。トライアルに参加することで、保護者はサービスの実際の利便性を体験し、加入を検討するきっかけになる可能性があります。
パターン1. 事業者を選定前に試行導入を実施
おむつサブスクサービスの選定に先立ち、実証実験を行うことは、保護者のニーズを把握する上で重要な役割を果たします。実際にサービスを体験してもらうことで、理解を深め、適切な選択を支援できます。しかし、このようなトライアルの実施にはいくつかの注意点があります。
まず、全ての業者が無料の試行導入を提供しているわけではなく、中には導入が前提でないとトライアルを提供しない業者もいます。これにより、トライアルを提供できる業者の選択肢は限られてしまいます。さらに、無料のトライアルを受けるために保護者の登録が必要な場合があります。トライアルの後に異なる業者を選ぶことになった場合、保護者に再度登録してもらう必要があり、手間がかかります。そのため、トライアル後に選定を行う予定の場合は、保護者登録が不要な業者を選ぶことが望ましいです。
パターン2. 選定後に試行導入を実施
おむつサブスクサービスの導入にあたり、保護者からの明確なニーズが存在する場合や、自治体が費用を負担する場合には、実証実験に先立って業者の選定を行う方法が採られることがあります。このアプローチでは、選択可能な業者の範囲が広がり、より適切なサービス提供者を見つけることが容易になります。選定された業者での実証実験を実施し、問題がなければそのままサービスの導入に進むことが可能です。この方法は、効率的にサービスを導入し、保育園や保護者のニーズに応えるための有効な手段となり得ます。
(その4)おむつの種類
おむつサブスクを保育園や自治体で導入する際、すべての園で統一されたおむつを使用することになりますが、これにはいくつかの課題が伴います。特に、保護者の中にはおむつの質感や素材に対する好みや要望が異なるため、品質が低いと感じられるおむつの導入は受け入れがたいと感じる方もいます。おむつのサブスク導入のハードルとなる可能性があります。しかし、保育園でのおむつ使用において最も重要なのは、おむつかぶれを防ぐことです。保育園ではおむつの交換頻度が高いため、おむつによるかぶれのリスクは比較的低いと考えられます。
国内の主要なおむつメーカー6社とブランド
メーカー | おむつブランド(一例) | |
---|---|---|
P&G | パンパース | |
ユニ・チャーム | ムーニー | |
花王 | メリーズ | |
大王製紙 | グーン | |
王子ネピア | Genki! | |
DSGジャパン | ミラフィール(※) |
(※)2020年より日本で販売を開始した国産の紙おむつ。SNS世代の保護者層の間で話題のハイブランドな高品質紙おむつです。
(その5) 利用率(加入率)
おむつサブスクを導入した際に、加入率が期待ほど高くないという状況が発生することがあります。実際の保育園での調査からは、おむつサブスクの利用者と非利用者が混在しても問題なく運用できることが明らかになっていますが、加入者が多いほど保育士の負担は軽減されます。
加入率は多くの要因によって影響される結果であり、値段設定、ブランドの選択、トライアルの実施、サービス説明のクオリティなど、多くの要素が重要です。そのため、加入率を最大化することを意識し、サービス導入を進める必要があります。
最後に
様々な観点から自治体へのおむつサブスク導入に際して考えなければならないこと、気をつけなければいけないことを本記事でご紹介させていただきました。いかがでしたでしょうか。自治体に合ったおむつサブスクを導入できるといいですね。
※本記事は、株式会社ブリッジウェルがおむつサブスク「おむつカンパニー(旧:ミラフィールビズ)」の導入経験を通して得た情報をもとに記載しています。そのため、本記事の内容は原則としておむつカンパニー(旧:ミラフィールビズ)のサービス提供内容がベースとなっています。他社のサービスを評価・比較するものはございませんので、ご注意ください。